『さよならのあとで』

2012年1月16日

『さよならのあとで』
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1月27日に一編の詩とイラストの本を刊行いたします。
3年前、僕は、一番の親友であった従兄を、
事故で亡くしました。
以来、創業時から、祈るような気持ちで、
この本をつくってきました。
みながみな、いいという詩ではありません。
けれど、僕が、この詩に慰められたように、
この詩が、かなしんでいる人の心を、
ほんの少しでも、支えてくれたら、と願っています。
なお、この詩の訳者は匿名ですが、その方もまた、
大切な家族を失っています。
下記に、全詩を、引用いたします。
 さよならのあとで
 死はなんでもないものです。
 私はただ
 
 となりの部屋にそっと移っただけ。
 私は今でも私のまま
 あなたは今でもあなたのまま。
 
 私とあなたは
 
 かつて私たちが
 
 そうであった関係のままで
 
 これからもありつづけます。
 
 私のことをこれまでどおりの
 
 親しい名前で呼んでください。
 
 あなたがいつもそうしたように
 
 気軽な調子で話しかけて。
 
 あなたの声音を変えないで。
 
 重々しく、悲しそうな
 
 不自然な素振りを見せないで。
    
 私たち二人が面白がって笑った
 冗談話に笑って。
 
 人生を楽しんで。
 
 ほほえみを忘れないで。
 私のことを思ってください。
 
 私のために祈ってください。
 
 私の名前がこれまでどおり
 
 ありふれた言葉として呼ばれますように。
 
 私の名前が
 なんの努力もいらずに自然に
 
 あなたの口の端にのぼりますように。
 
 私の名前が
 少しの暗いかげもなく
 
 話されますように。
 人生の意味は
 
 これまでと変わってはいません。
 
 人生はこれまでと同じ形でつづいています。
 
 それはすこしも途切れることなく
 
 これからもつづいていきます。
 私が見えなくなったからといって
 
 どうして私が
 忘れられてしまうことがあるでしょう。
 私はしばしあなたを待っています。
 
 どこかとても近いところで。
 あの角を曲がったところで。
 すべてはよしです。 
『さよならのあとで』
詩 ヘンリー・スコット・ホランド
絵 高橋和枝
装丁
本体 1300円+税
四六判上製/120頁
ISBN 978-4-904816-04-2 C0098
ヘンリー・スコット・ホランド(Henry Scott Holland)
1847年イギリスのヘレフォードシャー生まれ。
オックスフォード大学卒業。
1910年から同大学の神学欽定講座教授を務めた神学者。
セント・ポール大聖堂カノン。
1918年没。
高橋和枝
1971年神奈川県生まれ。東京学芸大学教育学部美術科卒業。
イラストレーター、絵本作家。
絵本作品に『くまのこのとしこし』(講談社)、『りすでんわ』(白泉社)、
挿絵を手がけた作品に『ノーラ、12歳の秋』(小峰書店)、『盆まねき』(偕成社)などがある。
http://kumanekonikki.jugem.jp/