新しい出版社の新しい仕事

新しい出版社の新しい仕事
なぜ、出版社をやろうと思ったの。
よく、人からそのように聞かれます。
私と同じように思う人は少なくないと思いますが、
出版社に勤務していたからこそ、自分が、これだ、
と思ったものを、自分の責任で、刊行したい。
これに尽きます。
しかし、それ以外にも、新しい出版社の新しい仕事に、
触発されて、という面もあります。
大手ではない出版社が、大変なクオリティで本を造り、
それをしっかりと書店に並べている。
気持ちが伝わってきます。
感動します。
たとえば、
自由が丘のミシマ社
吉祥寺のアルテスパブリッシング
千駄木の羽鳥書店
金沢の龜鳴屋
などなど。
ああ、この本はいい本だと思う時、
これを作った人もいい人なんだろうなあ、
と勝手に思っています。
ぜひ、いろいろと、お手に取って、見てみてください。
※なお、龜鳴屋さんは、オンラインのみの販売です。

文学の旅。

文学の旅。
今度刊行する小説の注釈を、せっせと作っています。
その短編は、ソ連時代のめぐまれない作家が、旅行に来ていた
見知らぬアメリカ人に、出版の融通をしてくれ、と頼む話です。
追いかけていっては、何度も、何度も、頼みます。
火中の栗は拾いたくない、というアメリカ人と、
自分のことしか考えていない、切羽詰まった、才能豊かなロシア人。
おもしろいし、哀しいです。
ロシア人は、会話の中で、ロシアのたくさんの作家の名前を、
滔々と、を引用します。
ドストエフスキー、チェーホフ、ソルジェニーツィン。
ここまでは、わかります。
イサーク・バーベリ、マリーナ・ツヴェターエワ、オシップ・マンデリシュターム。
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聞いたことがあるような、ないような、という名前です。
しかし、彼らの名を、図書館の文学辞典で調べると、俄然、読みたくなります。
たとえば、イサーク・バーベリは、要約すると、下記のようになります。
「一八九四 ~ 一九四一。ロシアのユダヤ系作家。
短編の名手であり、多彩な文体で『オデッサ物語』『騎兵隊』などを残した。
スターリンの粛清によって銃殺される」
そして、『騎兵隊』はネット古書店でそんなに高くない値段で、
『オデッサ物語』は新刊(群像社)で、今でも読むことができるのです。
読者というものは、このようにして続いていくのだ、と思います。
その導き人となるのは、必ずしも、現実世界の人間ではないのです。