1月13日取次搬入で、曾根博義(1940―2016)『私の文学渉猟』、
早田リツ子(1945―)『第一藝文社をさがして』という2冊の本を
同時に刊行しました。
『私の文学渉猟』は日本近代文学研究者の著者がさまざまな
媒体に執筆した、文学と古本にまつわるエッセイ集です。
扱われる作家、本は昭和が中心で、かなりの古書マニアでないと
知らないような作家、本、雑誌がいくつも出てきます。
けれど、この本はそうした稀覯書を紹介する本ではありません。
古本のを買うという行為に焦点をあてた本でもありません。
本書が正面から描くのは、文学、書物の世界の奥深さです。
戦時下の文学全集の行方を追う「『新日本文学全集』と戦争下の出版状況」、
文学が広く一般読者に読まれる過程をひもとく、「文芸評論と大衆」、
開戦の日の小林秀雄の文章を考える「十二月八日――真珠湾――知識人と戦争」等々、
文学好きの読者に読んでほしいエッセイがいくつも収録されています。
400ページのボリュームで定価は2300円+税。
デザインは櫻井事務所の櫻井久さん、中川あゆみさん、
装画は樋口達也さんです。
『第一藝文社をさがして』は、女性史にかんする著作をもつ著者による、
出版社の稀有な評伝です。
第一藝文社とは戦前に伊丹万作、今村太平らの映画にかんする書物を刊行し、
杉山平一の『夜學生』などの詩集を刊行した、関西の出版社です。
出版社として活動した時期は約10年と短く、これまでその実態は謎に
つつまれていました。
著者は一通のメールから、地元の滋賀に存在した第一藝文社に興味をもち、
社主の中塚道祐の遺族のもとをたずねます。
そこで手にすることのできた中塚の私家本、図書館と古書店を通して触れた
刊行物をとおして、第一藝文社というひとりの編集者によって営まれた
出版社の理念と運命をあきらかにしていきます。
デザインは同じく櫻井事務所の櫻井久さん、中川あゆみさん、
装画は小川哲さんです。
本書は半透明のカバーに包まれていますが、本体はフルカラーの布張り
というめずらしい装丁です。
ぜひ、お近くの書店で手にとってご覧ください。
『私の文学渉猟』
著者:曾根博義
価格:2300円+税
版型:四六判・上製
頁数:400頁
ISBN 978-4-904816-39-4 C0095
『第一藝文社をさがして』
著者:早田リツ子
価格:2500円+税
版型:四六判・上製
頁数:312頁
ISBN 978-4-904816-38-7 C0095