googleブックの問題と衝撃(長いです)。

2009年10月7日

googleブックの問題と衝撃(長いです)。
無題
今さらながらですが、googleブックについて。
試したことがある人にとっては、もう十分すぎるほどわかっていることだと思いますが、
これ、ほんとに、すごいです。
版元や、一消費者の観点を越えて、ただただ、驚いてしまいます。
たとえば、夏葉社と少し関係がある(名前だけですが)、
作家の「瀬沼夏葉」を検索すると、158件の書籍がヒットします。
つまり、「瀬沼夏葉」に言及している、158冊の書籍のタイトルと、
その掲載ページが、コンマ何秒でわかってしまうのです。
(そして、うち4冊のかなりの部分を、実際に読むことができます)
もちろん、すべての書籍をgoogleが網羅しているわけではないですけれども、
2009年1月5日以前に刊行されたすべての書籍がその対象となっているわけで、
そのカバーする範囲は、日々、広がっていくことになるでしょう。
消費者や学生にとって、こんなに便利なものはありません。
が、著者、版元にとっては、メリット、デメリットの双方があります。
メリットは、埋もれていた書籍に光があたること。
デメリットは、………… これは、下記のように長くなります。
そもそも、一連のgoogle訴訟は、アメリカではじまり、アメリカで
和解・合意したものです。
それがなぜ、日本で問題になり、なぜ日本でもまかり通っているのか。
軸になるのは3点です(3点もあるから、わかりにくいのです)。
(1) 「集団訴訟(クラス・アクション)」。
集団訴訟とは、薬害問題や、欠陥品保障など、当事者が多い場合に
用いられる訴訟方式で、その判決結果は、すべての利害関係者に対して、
効力をもちます。
googleブック訴訟の原告は、アメリカ作家協会とアメリカの主要出版社5社であり、
彼らは、日本ではなじみの薄い、「集団訴訟」という形で、googleと対峙しました。
(2) 「ベルヌ条約」。
世界各国は著作権を自国の法律によって保護していますが、国を越えて、たとえば、
日本では著作権が守られていても、他国では守られない、という事態を避けるために、
それぞれが、ベルヌ条約に加盟しています。
そして、信じられない話なのですが、(1)の「集団訴訟」での合意結果は、
(2)の「ベルヌ条約」加盟国の範囲に及ぶのです。
(3) 「フェア・ユース」。
googleは、今回の訴訟以前より、一貫して、googleブックが「フェア・ユース」であると、
主張しています。
「フェア・ユース」とは、私の理解する限り、著作権法の引用の原理に基づいており、
つまり、「報道、批評、研究など」の正当な目的で、書籍を引用する場合は、
原作者に対して許可をとらなくてもいい、ということが前提になっています。
つまり、googleが無断で700万冊(!)もの書籍をスキャンし、すべてのユーザー
に対して、公開するのは、「報道、批評、研究など」に貢献するためなのだ、というわけです。
だから、googleは、問題が解決する以前から、独自の判断で、「googleブック」を始め、
それを今もなお、継続しているのです。
長くなりましたが、ここからが、本題です。
正直に言うと、googleブックのやっていることは、小社のような小さな出版社にとっては、
デメリットより、メリットのほうが大きいです。
販売チャンスは増えますし、ひとりで企画・編集をするうえで、こうしたツールの存在は、
時間とお金の節約になります。
けれど、本の未来を考えると、そうとう、怖いです。
1冊の本は、文字通りデータに解体され、情報の束になってしまいます。
必要なところだけ読み、必要なところ以外は知らない。
それは、読書ではありません。
読書のおもしろさは、そんなところにあるわけではありません。
1冊の本が創り出す、その全体像にこそ、本の価値があります。
こうした、語るのに難しい本の魅力は、googleブックなどの興隆によって、
ますます共有されなくっていくのだと思います。
本の面白さを知らない人は、本を買いません。
コピー&ペーストで終わりです。
それが危機以外のなんでありましょうか。